十一月は何だか忙しい。日曜の結構な雨の日に車で尼崎市立図書館である、杉山平一
展を見にいくが、尼崎に住んでいる人などに聞いても誰もその場所を知らない。行っ
たこと無いて人ばかりだった。家人も尼崎の会社へ通勤しているが知らない。それで
パソコンで検索してみたら阪神尼崎駅から南へ五分の川べり左岸にあるらしい。
娘も連れて二号線をひたすら東へ走りなんとか着いたら、尼崎城の隣で大きなやや
古い感じの図書館だった。入るとすぐに、杉山平一没後十年の展示があり見る。
詩人。芦屋に家があり父親が大手の会社にいたが転勤族でうんざりして電気工場を
立ち上げて経営していた。しかし戦災で工場は全焼したり不景気も来て父親に頼ま
て会社を継ぐも、毎月の社員の給料も支払いに困っていた。戦前戦後がありずっと
金策に苦労していたのは、「わが敗走」を読んで知ってた。こぢんまりした展示
だったが司書の手作りのよく調べてある展示などなかなかよかったし、図書館も
良い感じだった。雨のせいもあるだろが、人が少ない。こんな図書館があるのに、
もっと利用したらいいのにね。本を見ていて車谷長吉の本が見当たらないのが少し
気になる「赤目四十八瀧心中未遂」は尼崎が出てくる、出屋敷のアパートでモツ串
刺しをするので、直木賞受賞作が。まぁ尼崎の知られたくないことだらけだろう
し意図的なのかも知れない。自分の家の近に、こんな図書館があれば行くのになぁ。
と思う。帰りに車で出屋敷の南にある海近くの工場街を走る、昭和で止まったまま
の様な風景だ。大きな工場が並んで建ち灰色の景色のなかだ。昔、家人の父がここ
で働いていた話を聞いていた、ばい煙がひどく五十代で肺ガンで亡くなったと。
母親は三十代で結核で亡くなっている。家人には両親がいない。兄だけひとりいる。
時代もあるが、あの頃は皆、必死で働いていたんだなと知る日だった。