五月も十日、やっと三分の一が終わった。朝は、やや曇り。
連休の間に家人がヒマにあかせて部屋の掃除をして、多分もう不要の本を
紐でしばった束がベランダの隅に放置されているのを、洗濯物を干して
いる時に発見する。こんなとこに置いたら雨に濡れてしまうしとりあえず
リビングに持って入り紐をほどき本を出してみると、半分ぐらい売れそう
なのがあり一冊づつ出してきれいに拭いて値札シールをはがし液ではがし
と内職のように作業するのが結構好きなのを自分で発見した。残った本
はまた紐でしばりベランダに置く。どうせ家人は気がつかんだろね。
夕方に買物にいつものスーパーで昨日カレーだったから今日はええと
何にしようとウロウロし雑誌コーナーで、「文藝春秋」を手に取り
パラっと見てからカゴに入れる。新聞で知っていた村上春樹「猫を
棄てる」が掲載されているのを読む。父親のこと戦争のこと、今も
生きている認知症の母親のこと、最後の雨の一粒の覚悟の言葉。
読んでずしんと重く体に残る文だった。猫を香櫨園浜へ父親と棄てに
いく冒頭のところで、私は海辺の光景が目の前に見えていた。今の
ように埋立されて水たまりみたいな浜じゃない、目の前がきれいな
海だった香櫨園の浜。何度も子どもの頃から遊んだ懐かしい海辺
この原稿を書くのは辛いものがきっとかなりあったと思う。しかし
書かないで済ませられなかったみたいな感じが余白に残っている