七月も最後の週に、もうすぐ八月。
週末に、この頃よく行く店に行きビールを飲んでいると顔見知りつうか
よく話す飲み屋の友のNさんから、あんたの彼氏が死んだで。と言われ
は?となる。なにそれ誰と聞くと店に毎日のように来て酒を飲んでいた
比さんのことだった。もう七十は越している一人暮らしの老人だが、
去年三十年仕事していた鳥肉店を解雇され収入が無くなり年金も店が
かけてなく困っていると客に相談もしていたが、十日ほど顔を見ないと
噂していた。アパートの家賃を滞納しスナックにつけがあり、そこのママ
が電話しても出ないから取り立てに部屋まで見にいくと死んでいたと言う
窓が少し開いてて見えたのだ。家族は誰もいないので警察が来て引き取る
しか無いと聞く。比さんは寡黙な人だが隣になるといつも少し話した
播磨の島で生まれて神戸に出てきて、鳥肉店で仕事したので指の爪が
ボロボロだった。訃報を聞いてもしばらくぼんやりしてビールを飲んで
いるしかできない。また噂だが比さんは字が書けず役所へ生活保護の申請
に客が行こうとしても名前が書けないので来なかったと、自分から字が
書けないと言わない人でプライドがあったのだろう。
誰もちゃんと家の場所を知らず、スナックのママはお金を取りに行くので
知っていた。電気も水道も止められた夏の部屋でひとり死んだのを思うと
やりきれない。その晩は花火が上がった。私は家にある蝋燭に火をつけ
線香をベランダの植木鉢の隅に立てて手を合わせてしゃがみ込んでいた。
誰かひとりぐらい見送ってあげないと。